よくこんな話を聞く。
大人は子供の頃に手に入らなかったものに執着する
多くの人が共感しているよね、私の場合はなんだろうとふと考えてみた。
先に結論を述べると
・常識的な仲間
・地元
・一つのコミュニティに長く居続けること
・いい師に恵まれること
この4つだ。
この手の話題でよくありがちなのが”子供の頃お金なかったから何が何でもお金が欲しい”とか”子供の頃買ってもらえなかったゲームを大人になってから買い漁る”ってのがよくあるけども、私にはそれが当てはまらなかった。
私の父は他の家の父親よりたくさんお金を稼いでいた。そして他の家庭とは違って母親がパートに出るとかもなく完全な専業主婦。決して大富豪だとかってわけではないけれど生活に不自由したことはなく、新しい遊園地に行きたいといったらすぐ連れて行ってくれたし、新しいゲームが出て「ほしい!」と言ったら「ゲームだけじゃなくて勉強もするんだぞ」と一言加えられてすぐに買ってもらえた。
そしてその約束は必ず守ったよ。しっかり勉強してずっと上位を守り続けていた。
そんなんだから、お金や物に対する執着って本当にないなと。勿論お金はあった方が嬉しいし欲しいものがあれば買うけれども、ケチケチしてお金を貯めようとか欲しい物は何が何でも買う!っていうような本気モードになることはないね。どちらかと言うと稼いだお金は誰かのためになるような使い方が最優先だと思っている。生きた金を使っていきたい。
常識的な仲間
まずは私が小学5年生の時に大ブームだったベイブレードのエピソードを。
予約もできなかったしネット販売も普及していなかったから、新しいモデルを手に入れるためには発売日の早朝に並ぶ必要があった。私の場合は近所にあったヨーカドーに通っていた。
アニメ効果で人気がどんどん上がって行くにつれてボーダーラインとなる並び時間がじわりじわりと早くなっていく。そんな中、極端に生産数が少ないモデルがあった。今でも覚えているよ。グリフォリオンというモデルだ。決してかっこよかったり対戦で強いとかってものじゃなく、簡単に言うと原作を再現したフィギュアが同行されている手の込んだモデルだった。
販売数は30個。要するに30番以内に並ばないと確実に手にすることはできなかった。
私は父と一緒に5時くらいから並んだ。それでもギリギリ30番以内に入るくらい。着いたときにはひとまず安心した。
そして7時くらいになり、転校したての小学校で初めて出来た友達が彼の父と一緒に並びに参加してきた。私が並び始めて2時間後だったけれど、購入確定のボーダーラインとはほど遠い60番目くらいだったように思う。
来たと同時に話しかけてきた。そして「何時に来たの?」と聞かれた。正直に「5時くらい!」と答えたんだ。そして返ってきた言葉は「そんな早く並ぶとか意味ないと思う!」。今でもはっきりと覚えてるよ。
ただその嘲る顔もすぐに不安な顔へと変わった。そう、店舗入口に掲示された貼り紙に「30個」と書かれていたからだ。明らかに買えない位置に並んでいたからね。
そして引き返して並び列に戻る途中、また声を掛けてきた。「後ろに入れて!」と。
一緒にいた私の父はすぐに返した。
「割り込んだらもっと早くから並んで買えるはずだった人が買えなくなっちゃうかもしれないでしょ、だからダメだよ」。すると「ケチ」だとか色々と悪口を言いながら元の並びに戻っていった。「意味ない」と嘲られて気分が良くなかった私、本当にスカッとしたっけな。
平和になって時間が経過し、もうすぐ開店の時間。またその子が交渉に来た。泣きそうな顔しながら「今のままじゃ買えないから後ろに入れて」って。もちろん突き返したよ、だって早く並ぶなんて意味ないんだよね?そして泣く泣く戻っていった。
結果は最初から分かっていたとおりだった。私は無事買えた、そして割り込もうとした彼は買えなかった。
ただ何も手に入らなかったわけではなくて、過去のモデルの色違い版?みたいなものは買えていた。ただ勿論お目当てのものではなかったし、ましてや割り込んでまで手に入れようとした本命は手に入らなかったわけだから相当悔しかっただろうな。私より並んでいた時間が短いとはいえ、彼が並んだ時間だって決して短くはないのだから。
そしてこれを機にパタリと一緒に遊ぶことがなくなった。基本的に誘われなくなったし、他の友人伝いで誘われて集合場所に行っても急遽集合場所を変えられるなどしてその場には誰もいなかった。仮にも転校したてで友達がほとんどいなかった状態だよ、完全にイジメだよね。大人になった今に考え直してみても自分は一切悪いことしていないと思うし、なんならヤバい奴が自分から離れて言ってくれたんだ、って思うようにしてる。
そして彼に私の父の仕事を悪く言われたことがあった。はっきり言って子供じゃ想像出来ないような悪口だったから、きっと家庭内で父か母が言っていた内容をそのまま言ってきたんだろうな。そう考えると一緒に割り込もうとしてきた非常識な父親像がはっきりとしてくる。そして最大のオチは卒業文集の彼の作文に書かれた「将来の夢」は私の父親の職業だったこと。
彼の夢が叶ったかどうかは知らないけど、そもそも特殊な仕事でコネも何もない一般家庭出身じゃ入れないくらい門戸は狭いし、そもそも一定以上の学力がないと一次試験すら突破できないしきっと無理だったろう。
このエピソードは今でも父親と話すことがある。大人になった今だから言えるけど、本当にこの父親の元に産まれて良かった、この人に育てられて良かったと思う。今の私はみんなが羨むほど最速で出世しているけれど、これは育ててくれた両親や親戚のおかげだと思ってる。大体最速出世を決める人って妬まれがちだけれども私は「とにかく敵も作らないし、みんなに可愛がられる性格で悪い噂を一つも聞いたことがない」とよく言われる。
そして子供の頃と違って大人になったら付き合う人を自由に選ぶことができる。小中学生の時は同じ地域だったり同じクラスだったり、ただそれだけで付き合う人が限定されていたが大人になればどこへでも行けるし、付き合う人も自由に選ぶことができる。
働き始めたらなかなか友達と遊ぶなんて機会は減るけれど、それでも欠かさず連絡を取り合って年に一度は一緒に食事に行く友人が2人いる。彼らはどっちも常識的だし、本当に困ったときは必ず味方でいてくれる。
そのエピソードとして以前一緒に遊んでいたネトゲで私が虚偽の罪状で晒されて専用スレまで立つレベルまで追い込まれることがあった。一緒に遊んでくれていた友人まで一緒に名を連ねられていて、この2人も例外でなかった。中には共犯になるのが嫌で私の元から去って行った人もいたけれど、この2人だけは「晒されているようなことする奴じゃないって知ってるぜ。便所の落書きなんだから気にすんなよ、そんなことはどうでもいいから今すぐやるぞ!」っていつも通り接してくれた。去ることなく味方になってくれた。
こんないい奴らだからこそ、彼らが過ちを犯しそうになったときは”嫌われてもいい”覚悟ではっきりと物を言うようにしている。ぶつかることもあるけれど、最後には絶対仲直りするんだ。
きっと”子供の頃に手に入らなかったもの”の一つ目は彼らのような”何でも言い合える本当の友人”なんだと思う。
地元
私の父親は転勤族だった。職業柄、一つの地域に長く居続けることはできなくて大体2年に一回のペースで引っ越していた。仲良くなったと思ったらすぐに転校、そんなんだから引っ越さない子達が羨ましかった。
大人になってから「地元どこなの?」と聞かれても、地元なんてないからはっきりと答えることができない。だからこそ、「転勤族だったので色々なところに思い出があります。そして学生時代にバイクで日本全国を走り回ったので日本中色々なところを知ってますよ、〇〇さんはどこ出身ですか?」って話を広げるようにしている。
私のパートナーには地元がある。ただし都市再開発によって実家が破壊対象に入ってしまい泣く泣く追い出された。それでも地元という事実は変わらないから「一緒に住むのは絶対〇〇の地元にしよう」と最初の時点から約束していた。
きっとコレが2つ目。自分にはない”地元”という存在、彼女が手放さないように守ってあげるのは私の大事な役目だ。
一つのコミュニティに長く居続けること
子供の頃、転勤しまくりなわけだから一つのコミュニティに長く居続けることができなかった。ただし大人になれば人間関係だけじゃなくてコミュニティに居続けるかどうかも自分で選択できる。
大きなところだと「会社」だ。抜けようと思ったら退職/転職で一発だ。同期も後輩も部下も、多くが転職していった。
ただ私は一度たりとも辞めたいって思ったことがない。むしろ一つのところに居続けて、同じ上司や部下と一緒に仕事を続けられることに大きな喜びを感じている。そう、これこそが子供の頃に羨んだ環境そのものなのだから。
いい師に恵まれること
最後は中学時代に遡る。
中学時代の3年間は転校することなく、1つの学校に通い続けた。ただしお世辞にも良い環境だったとは言えず、とても嫌なエピソードが一つある。
ある日いきなり職員室に呼び出された。「お前にいじめられた奴の親が何度も学校に殴り込んできている」と。身に覚えがあるわけもないし、何なら全く接点すらない。
自称被害者の彼が通っている学習塾に入ろうと手続きを進めかけているときの話だった。こんなことになってしまったわけだから一緒の塾に入るのは諦め、別の塾に入ることになった。
後から分かったことだけど、どうやら彼は親や塾に対して学校での成績を虚偽申告していたらしく、同じ中学校の生徒が入ったら嘘がバレてとんでもないことになるからなんとしてでも阻止したかったんだろうな。
最終的には嘘がバレたようで学校に殴り込んできた親が塾に対しても殴り込みをかけていたらしい。「金払ってるのに成績上がらない!お金払ってるんだから成果出せ!」って。つまりそういう親だったってこと。悪いのは塾じゃなくてその教育姿勢でしょう。
いじめについて一切身に覚えがなかったのでどんなに詰められても認めなかったが、日々詰め方がエスカレートしていった。そして他の誰からも見られない放送室に閉じ込められ、「認めるまで帰さない!」と夜8時を過ぎても帰してもらえなかった。
これが連日続くものだから両親と相談の上、最後には私が折れた。別に失うものはなかったし、ただ一言認めるだけで無意味な時間とおさらば出来ると考えたんだ。
もし中立の立場でしっかりとお互いの言い分を聞いて正当なジャッジを下してくれる先生だったら、きっとこうはならなかっただろう。
そこで今の会社の上司を当てはめてみる。本当に理想的な大人達だ。お客さんの言い分ばかりじゃなくて部下の言い分もしっかり聞いてくれて、お客さん側に落ち度があると判断したら全力でぶつかってくれる本当にカッコいい上司なんだ。この環境をこれからも大切にしていきたい。そして次は私がそうなる番、可愛い部下達を全力で守るんだ。
おわり